さまざまな支援のあり方

産後うつ病の女性のメンタルヘルスを支援する際、さまざまな形の支援があります。

1) 安心して休息できるように援助する

うつ病の女性にとってもっとも重要なのは休息です。しかしそれは育児や家事を担う女性にとって難しいものでもあります。どうしたら安心して休息できるか、ともに考える支援がなにより望まれます。

2) 産後の女性のセルフマネジメントを促進する

女性自身にできる対処は、たくさんあります。女性自身が自ら予防し、また回復を促進できるように支援することをまず大切にしましょう。

3) 家族からのサポートを調整する

家族からのサポートは、なにより大きな力になります。特にパートナーからのサポートの有無は、うつ病の発症や回復に大きく影響することが報告されています。

4) 地域にある支援を紹介する、あるいはつなぐ

地域には、保健センター、産婦人科、小児科、精神科、助産所などの専門機関だけでなく、男女共同参画センターでの相談窓口、さまざまな子育て支援・ボランティアがあります。有料の家事支援サービスなどもあるでしょう。地域の状況、女性の状態・ニーズに合わせて、それらを紹介したり、具体的につなぐお手伝いをすることも有効な支援です。

5) 心理的支援を提供する

女性の悩みやつらさに傾聴することも大切な支援です。女性の否定的な考えや見方を否定せず、また肯定もしない関わりが基本になります。ただし思いを受容した上で、事実をともに確認することはOKです(うつ症状による認知のゆがみを修正することになります)。

時間的制約がある場合も、「それはつらかったね」、「つらい中、今までよく頑張ってこられましたね」というような労いや受容的態度が、女性に安心感をもたらしたり、信頼関係を築くことにつながります。

6) 精神科医につなぐ

うつ症状が明らかな時、自殺企図に関わる考えがある、過去にうつ病の既往があるときなど、できるだけ早く専門医に紹介することが必要です。

7) 回復には時間がかかることを念頭に置いて関わる

うつ病が回復するまでには一般的に時間がかかります。症状に波があり、また再発しやすい病気でもあります。当事者や家族だけでなく、援助者自身もそのことを念頭に置いて、焦らずに関わり続けることが大切です。

8) 抗うつ薬を服用している場合には、適切に服薬継続できるよう支援する

女性のセルフマネジメントを促進する

・まずは女性自身に産後うつ病について理解してもらいましょう。
 (頻度・・・誰にでも起こりうること、症状、必要なケアや治療など)
・休養とサポートの必要性を理解してもらいましょう。
・自分で出来るリラクゼーションを見つけてもらいましょう (呼吸法、アロマ、入浴・・・)
・自分が使えるサポートを知ってもらいましょう。
 (家族からは? 友人・知人は? 地域にあるサポートは? インターネット上には? リンク: ママブルーネットワーク
・必要時には必ず相談できるようにしておきましょう。つまり、どこに連絡すればよいかを知っておくことが大切です (地域の保健センターの連絡先を確認しておくなど)。

専門医に照会すべき時、特にフォローが必要なとき

・自殺に関する考え、行動がある
・幻聴・妄想があったり、症状によって、日常生活がかなり障害されている。つまり、重症のうつ病の場合
・絶望感がある、不安焦燥が著しい、自責感が強いなど特異な症状が認められる
・過去にうつ病等、精神疾患の既往がある
・キーパーソンの自殺・喪失体験がある
・ソーシャルサポートが十分でない


専門機関につなぐときのコツ

 精神科に対する偏見がまだ存在することを否定できない中、精神科受診にためらいを感じる女性は少なくありません。専門機関につなぐ必要がある場合、どのような関わり方が求められるのでしょうか。

1) まず、女性の話に耳を傾け、思いに寄り添い、つらさに十分共感することが大切です。「この人は私のつらさをわかってくれる」という思いを抱いてもらうこと、つまり女性との信頼関係が何より求められます。それまで頑張ってきたことを認め、労うことも女性の安心感につながるでしょう。

2) 思いを十分に聴き、関係が築けた上で、うつ病は稀な病気ではなく、また弱い人がなるものでもない、つまり脳の神経伝達物質が関わる病気であるなど、うつ病や治療に関する基本的な知識を提供します (「うつ病」という言葉に抵抗がある場合は、表現を工夫する)

3) できるだけ早く楽になるためには、専門家に相談することが一番効果的であることを誠意をもって伝えます。

4) 「精神科」といっても、さまざまなタイプの病院があります。女性が安心して受診でき、また適切に治療を受けられる病院の情報を得ておくこと、あらかじめ地域の病院と連携をもっておくことが望まれます。

5)受診に際し、家族の理解を得ておくことも大切です。原則として本人の了解を得た上で家族にも受診の必要性を説明しましょう。家族の偏見のために受診が困難な場合もあります。ケースによっては「心療内科」と標榜している病院を紹介することで心理的抵抗が減じることもあります。

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