うつ状態にある女性を家庭訪問する際の工夫

 産後うつ状態にある女性を家庭訪問をする際に、メンタルヘルス支援の視点からどのような態度や工夫が求められるでしょう。

1) 安心感を大事にする

 専門家の訪問を受ける時、女性は不安や緊張を感じているかもしれません。うつ状態であればなおさらです。子育てや家事がうまくできないと悩んでいたり、ダメな母親と思われないようにしなければと思っている場合もあるでしょう。

 女性の不安や緊張感は、言葉に表現されなくても何となく伝わってくるものです。その緊張感に訪問した看護職が無意識のうちに巻き込まれてしまうこともあります。反対に、訪問した看護職が緊張していたり、力んでいると、それが母親にも伝わっていきます。

 不安は伝染するものです。訪問する際、まずは看護職がリラックスして臨むことが求められます。

 互いの安心感が何より大事なのです。

2) 母親の側面だけでなく、女性自身に関心を持って関わる

 うつ状態にあるときや不安が大きいとき、専門家から女性の母親の側面だけをみて、たとえば「母親として〜すべき」などと言われると、女性はその時に体験しているつらさを表現できなくなってしまいます。そうは言われてもできない自分をさらに責めることにもなるでしょう。

 時には、母親役割はいったん横において、ひとりの女性として関心をもち、受容的・支持的態度で関わることが求められます。

3) 説得やアドバイスの功罪

 悩んでいる人をみると、専門家として何とかしてあげたいと思うのは自然な思いです。しかし、説得はほとんど役に立ちませんし、焦ってアドバイスしても、女性はよけいにつらくなるだけです。

 どうすればよいか、その答えは女性自身が持っています。ただ、その時はまだ答えに気づいていないか、答えを導き出すためのエネルギーが十分でないだけなのです。専門家を含む周囲の人ができることは、女性自身が答えを見つけ出せるように見守り、支えて、ときどき情報提供することです。

 何かしてあげたいと力んだり、問題の解決を焦ってはいけないのです。

4) 女性の生活を大切にする、体験に寄り添う

 女性がうつ状態にあるからと言って、うつ症状に注目しすぎると、関わりが不自然になってしまいます。まずは、精神症状よりも女性の生活や子育てに関心を寄せて関わるようにしましょう。日頃の生活を聴く中で、「育児や生活上の気がかり」も自然に表出されるものです。そして、女性の体験を十分に聴き、寄り添い、共感的に理解することが求められます。

5) 聴きすぎない

 うつ状態になると、心のエネルギーが低下します。話すことにもエネルギーが必要なので、話し過ぎると余計に疲れてしまいます。話し終わって、訪問者が帰った後に罪悪感が生じることもあります。

 女性の様子を見ながら、あまり長い時間聞いたり、はじめから家族関係など、女性にとって「重い」話を聞きすぎないように配慮しましょう。

 ときどき「話をしていて疲れませんか?」とか、「この話をしていて余計につらくなりませんか?」と確認しましょう。また、ある程度話を聞いたら、「疲れすぎるといけないので、今日はこのくらいで話を終えましょうか」と伝えてみましょう。その際、必要に応じて、次に話をする予定を約束してもよいでしょう。

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